いわさきちひろ生誕100年 ピエゾグラフ展 世界のおはなし

さざなみのような画風の流行に左右されず、何年も読みつづけられる絵本を、せつにかきたいと思う。もっとも個性的であることが、もっとも本当のものであるといわれるように、わたしは、すべて自分で考えたような絵本をつくりたいと思う。(中略)童画は、けしてただの文の説明であってはならないと思う。その絵は、文で説明されたのと、まったくちがった面からの、独立したひとつのたいせつな芸術だと思うからです。

いわさきちひろ 1964年

いわさきちひろは、繰り返し描いたアンデルセンの童話以外にも、世界の名作や物語を数多く手がけています。ちひろは女学生時代から映画に親しみ、ヨーロッパの地への憧れがありました。1966年にはフランスやイタリア、デンマークなど欧州へ旅する機会を得ます。1960年代半ば以降に描かれた作品では、童話のなかのファンタジーの世界や異国の地の生活を、想像力を膨らませながら、ときに旅での見聞も生かして、いきいきと表現しています。本展では、メーテルリンクの『青い鳥』のほか、フランス映画を絵本化した『あかいふうせん』、ウェーバーの楽曲をイメージした『ふたりのぶとうかい』など、世界のおはなしを描いた絵本をピエゾグラフ作品で紹介します。

*ピエゾグラフとは……ちひろ美術館では、現時点でのちひろの作品の色合いや風合いをデジタル情報として保存し、最新技術の「ピエゾグラフ」という方法によるデジタルアーカイブと「ピエゾグラフ作品」としての複製に取り組んでいます。耐光性のある微小インクドットによる精巧な画像表現は、繊細な水彩画の再現性を飛躍的に高め、明るい光のもとでの絵の鑑賞を可能にしました。