コンセプト

いわさきちひろは、1918年(大正7年)12月15日に生まれました。ちひろの没後3年目の1977年に開館したちひろ美術館では、以来ちひろをずっと見つめ、展覧会をはじめさまざまな活動を通して、その画業や人物像、絵に込められた想いを伝えてきました。そして、ちひろの生誕100年を迎える2018年、「Life」をテーマに、新たなプロジェクトを立ち上げます。

ちひろが絵を描いていた時代から大きな時代の変化を経た今、どのように次の世代にちひろを伝えていけばよいのか――長嶋りかこさんをアートディレクターに迎え、ちひろの新たな伝え方をともに考えていくなかで、この「Life」というテーマが生まれました。

「Life」は、いのちや生命の力が本義ですが、ほかにも、いきもの、人生、生涯、生活、暮らし方、活気、生きがいといった広い意味を持つことばです。ちひろが大切に思い、描いたものは、まさにこれでした。子どもたちのいきいきとした姿、可憐な花や小鳥たち、ささやかな暮らし、そして、いのちそのもの。

日本が戦争へと突き進むなかで娘時代を過ごしたちひろは、あたりまえのようにある生命や生活のはかなさを知っていました。だからこそ身近ないのちをいつくしみ、なによりかけがえのないものとして、みずみずしい色彩で包み込むように描き続けました。

ちひろが絵を描いた時代から、半世紀近いときが経ちました。しかし、あらゆる情報があふれ、世界中の人たちと交信ができるようになった現代も、世界各地で戦争が起き、貧困や差別によっていのちが粗末にされている現実があります。

ちひろの絵は、時代を超えて、いのちの大切さを語り続けています。その声に耳を傾けながら、今を生きる私たちの「Life」を考えていきたいと思います。

ちひろ美術館